0.5 計算に使う記号などの約束

前のページ次のページ; 目次へ戻る

 弾性体の力学を扱う場合、応力記号に(σ、τ)を使います。コンクリートと鉄筋の応力を表わす記号もこれを踏襲しています。ただし、強度の記号などには、σの代わりにfの記号を使うこともあります。σは、引張り応力に正、圧縮応力に負の符号を考えるのが標準です。しかし、コンクリート工学では、コンクリートの引張応力をほとんど考えませんので、誤解が起きなければコンクリートの圧縮応力も正の数値で表示します。そのため、引張応力が現れる場合には、言葉を補って説明します。鉄筋は引張応力で使うのが原則ですので、正の数値で表わします。しかし、コンクリートの圧縮側にある鉄筋の応力を表すときは負の符号を付けるか、圧縮応力と断って正の数値を使います。ただし、圧縮側の鉄筋の応力は大きくなりませんので、特に必要が無い限り、圧縮応力の計算を省きます。曲げを受ける鉄筋コンクリートでは、コンクリート断面の上側が圧縮、下側の鉄筋が引張になる曲げモーメントを正の曲げモーメントと約束します。連続梁の支点上では負の曲げモーメントが作用することになります。鉄筋の利用種別を表わすとき、正鉄筋・負鉄筋の用語がありますが、この正負は曲げモーメントの正負と対応して呼ばれ、どちらも引張り応力を受け持つ主鉄筋です。

 コンクリートの剪断応力と鉄筋との付着応力はどちらも記号としてτを使い、常に正の数値で表わします。この符号の吟味は、理論的な解析のときに必要になり、座標系の定義などと関連を持たせて定義しますが、設計計算の場合には符号を付けて区別する必要がありません。なお、慣用として、応力ではなく応力度の用語が使われますが、これは単位断面積当たりで考えた応力の度合いとか程度を含意した表現であって、工学用語です。許容応力度のように使います。


次のページ;