７章　平面図形の干渉処理

7.1　プログラム RUNI.BAS の解説

• 第3章で立体図形の干渉処理の説明をしましたが、そこでは立体図形の和・差・積に相当する PUNI/PSUB/PINT を紹介しました。平面図形でも、同じ処理ができるように RUNI/RSUB/RINT を用意してあります。平面図形の処理には、これに加えて、紙細工を重ねるように、後の図形を前の図形の上に重ねて(overlay)、下の図形の一部または全部を隠す処理を、コマンド ROVL で準備しました。
• 作図の方法は、特に注意することもありませんが、例題のプログラムにはウインドウの設定コマンド DPWIND がありません。GEOMAPのプログラムが立ち上げられて、このBASIC プログラムが最初に実行されるときは、DPWIND 0,0,100. としたデフォールトのウインドウが設定されています。他のプログラムを実行してウインドウを別に設定した後では、例題の作図とは異なった図形になることがあります。
• 二つの矩形モデルの作成には、コマンドのRECTとRECTMとを使っています。特にRECTMでは左下の座標と右上の座標とを配列POSAとPOSBとで指定しています。しかしPOSAは定義文なしでいきなり引用しています。これはデフォルト値として、POSA(3)が作成され、初期値が(0, 0, 0)となっていますが、平面座標の原点データとして利用しています。
• 平面図形のグラフィック処理では、領域にハッチングさせるコマンド HATCHR を用意してあります。ハッチングに用いる線の種類は、直前に DPENTX で指定します。交点を求めるアルゴリズムを次に解説します。
  1. ある領域に斜めの線を使ってハッチングを描くには、まずその領域を囲む矩形の寸法を求めておきます。
  2. 作業用に、もう一つ、斜めを向いた矩形を考えます。この一辺は、描きたいハッチングと平行に置き、この矩形が与えられた領域を隠すように寸法を決めておきます。
  3. 描きたいハッチングの線は、この斜めの矩形の一辺を、ピッチ分だけ平行移動させながら反対側の辺まで移動させます。
  4. ハッチングの作業用の線分と、領域の辺との交点を求めます。交点は全く生じないか、偶数個が求まるはずです。
  5. 偶数個の交点を、ハッチング線に沿って順番に並べ替えます。
  6. 最初の交点から始めて、奇数番目の交点でペンを下げ(DPMOVE)偶数番目の交点まで線を引きます(DPDRAW)。

以上がハッチングのアルゴリズムですが、交点を求める計算で問題が起きます。ハッチングの線分が、領域の頂点をちょうど通ると、線分を引く判定に困ります。このように判定が困難になるときは、ハッチングの線分と辺とが重なる場合にも起こります。数値計算の処理においても、計算誤差の影響が大きく現われます。これを避けるため、このハッチングの線分を、僅かに平行移動して交点の再計算をします。これによって、頂点との交差を外すことができます。僅かに平行移動した線分が、眼に見えるほど大きく動いて作図されることはありません。