多面体の各面の平面図形を厚紙に描き、それを切りだして多面体に組み立てるのは、よく知られた工作です。このとき、できるだけ各面を連続させた展開図を使います。工作の立場からは、組み立て易さと、用紙の寸法を有効に使うような図形の配置を工夫します。ここでは、与えられた多面体から自動的に展開図を作成させるコマンド HDEV を紹介します。この処理は、3Dの幾何モデルから2Dの幾何モデルへの変換の一種です。多面体の幾何モデルのデータ構造と、展開図の幾何モデルのデータ構造とは、それぞれ頂点・辺・面から構成されますので、物理的に相似です。ただし、多面体の面は必ず他の面に接続しているのに対して、展開図の面(領域と呼びます)は、他の領域との境界ではない、自由な縁もできます。これは、日本の分県地図のように、周囲を海で限られた地図のような性質です。
展開図を作成するには、多面体としてのトポロジー的な性質である頂点・辺・面の関係をそのまま保った幾何モデルのコピーを最初に考えます。これをサーフェースモデル(紙細工)であると考えて、切れ目を入れて切り離す辺と、隣の面とつながる辺とをあらかじめ決めておきます。その規則は次のようになります。
多面体の展開図を作るには、多面体を構成する個々の面ごとに、その面に垂直な方向からみた平行投影の多角形データを作り、地図のようなつなげて2Dモデルにまとめます。まず出発となる一つの面を決めます。この面は、これを構成する辺のうち、一つの辺を除いて、残りすべてを切り離します。これは、缶詰の蓋をカンきりで切って、一か所を残して蓋を開け、中を覗くような操作と似ています。最初の多角形を、平らな机の上に置くように頂点の座標を二次元の (x,y)座標に変換します。ただし、GEOMAPのデータ構造の仕様では、投影される平面図形は、垂直な壁のような投影面に描き、座標面は、記憶領域の仕様では世界座標系の(y,z) 平面を使っています。
つなぐ辺に接している面を平面図形に直して、最初の多角形と接続させます。これは、平らな机の上に、辺を接してカードを並べていくように、一枚一枚つないでいきます。新しく多角形をつないで領域を増やすごとに、その領域の辺で、つなぐ辺が残っているかどうかを調べます。もし、つなぐ辺を介した領域が、既に組み込まれていれば、その辺を切って、辺の追加処理を行ないます。このようにして展開図を完成させていきますが、複雑な多面体モデルでは、全部の領域が一つにつながらなくて、多面体モデルの集合体のように複数の独立した展開図ができることもあります。この場合には、図形が重ならないように各展開図を平行移動させるようにしてあります。