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18. 平面図形諸量の合成

18.2 離散と連続の調整


18.2.1 数値はすべて整数扱いで計算していること

 数学で言う実数は、無限に連続(continuous)した桁数の数字でなければ正確に表すことができない数の集合です。実際には、或る桁数のところで打ち切った有限の桁数の数字で表します。これは連続している並びを飛び飛びの個所で取り出すことです。これを離散値(discrete)と言います。数学的な正確さにこだわると、無理数であるπや2の平方根を、或る有限の桁数の数値に丸めて使うことに後ろめたさを感じます。それが嵩じると、偏った正義感を持った主張に繋がることがあって、例えば「πの数値を3と教えるのは間違いである」と大真面目に非難する人も現れます。そこで、どの程度の桁数がよいか、の実践的な妥協を図ります。数値計算は、実数であっても、表記上の小数点の位置は便宜的なものとして、実際には整数の計算をします。これが浮動小数点数です。また、計算結果も適当な桁数のところで数値を丸めますが、これも整数化です。この処理は、ごまかしに映りますので、不信感を持たれることも起こります。お金の計算が絡む社会は、数値の丸めがつきものですので、士農工商の言葉にあるように、商を最低位の身分におとしめる風潮がありました。簿記に使う計算は、明快な規則で数の丸めを扱うように、計算上の間違い、つまり誤差、を確実に指摘できるシステムが研究されています。技術計算の場合にも丸めは頻繁に行われますが、扱う対象ごとに実務経験的な処理をしますので、会計計算にあるような明快なまとめにならないことも起こります。工業設計では、材料の積算をする場面で、技術計算と事務計算とが混ざりますので、数値の丸めの約束を決めて、レポートの書式を整えます。
2009.6 橋梁&都市PROJECT

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