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2. 日本語文書の構造

2.3 語順と向き


2.3.5 音楽の文書化が楽譜であること

 音楽の歌詞と旋律は、多くの人が楽しみます。これも時間的な音の流れです。旋律を紙に書く方法が工夫されています。西洋音楽の楽譜の書き方は、輸入技法です。音の高さを区別する言い方は「ドレミ〜」ですが、英字記号に、A〜Gを当てます。これに、日本語では「イロハニホヘト」を当てました。ハモニカ、大正琴の楽譜は、イロハで書いてあります。楽譜が無くても、歌を楽しむことはしますが、普通の日本人は絶対音感が鋭くありません。今はカラオケ全盛ですが、以前、流しの音楽家は、客に合わせて伴奏しました。歌う人のテンポに合わせますし、音痴の客には音の高さに合わせて、元の歌の調を変えて伴奏する特殊技能を持っていました。楽譜を眼で追うときは、頭の中で音を再現しています。楽譜と文書とは時系列としての音を紙などに記録する手段ですが、大きな違いが一つあります。楽譜は、複数の時系列の同時進行を記録します。大編成のオーケストラや小編成の合奏集団用の総譜は、音楽専門家が使う文書です。アマチュアが音楽を楽しむときにも見たいので、小型本にした出版物として売られています。音楽レコードを耳で聴いて楽しむときは、音の発現順をたどり、それなりの長さの時間を取られます。楽譜を見る楽しみ方は、拾い読みや先読みができることが、文字文書の読み方と同じ方法です。例として、図2.1を示します。筆者の趣味が入るのをご容赦頂きますが、モーツァルトのオペラ、ドンジョバンニから、ツェルリーナのアリアの始め部分です。オーケストラの指揮者は、歌手の声も含め、複数の楽器演奏の同時進行を聞き分ける技能に恵まれていないと勤まりません。

図2.1 音楽の総譜は複数の時系列を並列に書き表した文書とみる
2010.2 橋梁&都市PROJECT

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