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付録F.活字の物理的な寸法とその用語

Appendix F. Typesetting and Composition


F1. 活字寸法と文字寸法(解説)

 活字寸法(size)とは、活字の軸、ボディ(body)の寸法であって、邦文では正方形が基本である。文字は、この正方形の内部に納まるので、文字寸法は活字寸法よりもやや小さく、ベタ組みでも、文字と文字との間にわずかの隙間が残る。このことが、文字の可読性(readability)を与える。邦文は、行間を空けないと可読性が悪くなるが、欧文ではそれほど悪くならない。

 横組みの場合、和文と欧文や数字が混植されると、高さが不揃いの印象を与える。電算写植では、この対応にE欧文R欧文の二種が工夫されている。同じことは、画数の多い漢字と仮名や数字の組み合わせでも起こる。なるべく同じ高さ寸法に揃えるが、文字寸法が大きくなると、下の線を揃え、仮名の高さをやや小さめにすると、手書きの感覚が得られる。製図などの技術文書で行なわれている。

 欧文の文字は、大文字(capital letter,cap)、小文字(small letter)の区別があり、文字の高さも幅もまちまちである。斜体のfなどは、文字幅が活字幅よりも大きく、隣の活字の肩に乗るものもある。活字の寸法は、高さは共通で横幅を変えて作られるので、字数と行幅の関係を求めるのが面倒になる。

図F.1 英字寸法の基準線

 英文文字のデザインでは、高さ方向の寸法を決める基準線があり、その名称は、上から、次のように呼ばれる。

 大文字は、ベースラインからキャップラインの高さまでを占める。これをキャップハイト(capheight)と言う。小文字のうちacemnorsuvwxzのことを短字(short letter)と言い、ベースラインからミーンラインの高さに納まる。この高さをエックスハイト(x-height)またはゼットハイト(z-height)と言う。この高さより上にでる部分をアセンダと言い、下にでる部分をデセンダと言う。大文字のQ,小文字のbdfjなどを長字(long letter)と言う。これらの線の間隔の比率は、書体(style)やポイント寸法の大小によってデザインが工夫されている。

 英字の横幅は、Mを境にWが最も広く、iが最も狭い。文字の並びが等間隔に見え、体裁よくするために文字間隔を狭めることをカーニング(kerning)と言う。例えば、AとVとが隣合う場合、活字を詰めて並べただけではうまく並ばない。このため、活字のボディから字面がはみ出たカーンドレター(kerned letter)や、ff,fi,fflなどを一つにした合字(ligature)を使う。電子組版では、この処理が容易にできるようになった。

 一行に英字が何字詰まるかの字詰めを表す数字には、アルファベットレングス (alphabet length)または、a−zレングス(a-zlength)がある。これはアルファベト小文字26文字を並べた長さが、何em(全角)になるかで示す。参考数値に次のものがある。

つまり、小文字の平均は半角であるが、小さい活字は、可読性のため、間隔を広げるなどの工夫がされる。


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