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はじめに

 橋を話題に取り上げるとき、橋の画像があると、具体的な理解に役たちます。江戸時代の末期、歌川広重(1797-1858)が描いた東海道五十三次が代表的な例ですが、名所案内的な風景画の浮世絵が多く発売されていました。その中に、橋を直接の画題、または背景に描き込んだ作品が多く見られます。その後に続く、明治維新(1868)を挟んだ、前後それぞれ約10年間の短い年限は激動の時代であって、通称で文明開化と呼ばれています。とりわけ、近代化を意識して、道路、鉄道、などのインフラストラクチャーの整備が性急に進められました。そこでは、橋の架設が重要な意義を持っていました。しかし、性急であった反動として、長持ちする近代的な構造に架け替える要望が増え、その時代の橋梁本体は残っていません。

 文明開化時代の浮世絵や錦絵は、珍しい欧米文物の紹介を目的とした、現代風に言えば、ジャーナリスティックな性格を持つようになりました。その中で、橋の画題が含まれているものは貴重な技術データです。愛知県日進市のマスプロ美術館は、文明開化時代の浮世絵や錦絵を収集してあるユニークな美術館です。同館の収蔵点数の中から、橋に関係した画像を利用させて頂き、簡単な紹介を付したのがこのレポートです。ここに記して感謝します。

 大きな寸法であっても精細に閲覧できるようにしたデジタル画像は、パソコンのメモリ空間を大きく費消します。大量の画像を電子メールなどを介して扱うときは、通信の機能が不足することも起こります。このWEB版レポートでは、パソコンの画面で、元の浮世絵がほどほどの大きさで見られるように、画像寸法単位を640×480ピクセルに抑えてあります。一般的な閲覧には、この寸法でも十分ですが、画像の中の文字などは読み難くななっています。詳しく見たいときは、実物を展示してあるマスプロ美術館に出向くことを薦めます。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2016」

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