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11. グラフィックス言語の解説

11.3 グラフィックスの言語設計


11.3.7 計算幾何学を広く捉える

 ここで設計の問題を蒸し返します。形状の設計では、幾何に関わる計算が非常に多いことに注意を向ける必要があります。簡単な幾何学的な問題を数値的に扱うとなると、案外なことに代数計算が非常に面倒になる場面が多くなります。このことを扱う分野を計算幾何学(computational geometry)と総称するようになりました。この学問が扱う問題として、ボロノイ図が有名ですが、もっと一般的に、コンピュータを使って幾何に関する数値計算をすること全体と考えるのがよいでしょう。例えば、今ではプログラミング言語の中で、三角関数を普通に使うことができますが、これを精度よく数値計算する技術は、古典的な計算幾何学と考えることができます。アルゴリズムの説明などは教養課程に加えておきたいところです。幾何に関わる代表的な数値計算に、二線分の交点座標を求めることを例としましょう。集合の考え方で見ると、線分は無限に多い点の集合です。交点は、形式的には集合の論理積で得られますので、論理式で表現する言語を提案することができるわけです。数値計算法を吟味すると、計算結果が一意に求まるときは、非常に特殊な場合だけであることが分かります。平行である場合、線分の延長で交点がある場合、接する場合、など、幾つかの起こりうる条件を吟味しなければなりません。したがって、これを扱うサブプログラムは、三角関数のように一意の解が得られるような関数の形を取ることができません。このことが、実は計算幾何学の面白さでもあるわけです。なお、計算幾何学についての解説は、下記のURLに載せてあります。
http://www.nakanihon.co.jp/gijyutsu/Shimada/Computational%20geometry/index.html
2010.11 橋梁&都市PROJECT

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