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8. 論理を表す文と式

8.3 普通の文章で使う言い回し


8.3.1 代名詞を使わない文書はくどくなる

 公式的な文章の言葉の表現形式、つまり、言い回しは、伝えたい事柄を正しく理解させるため、定型的になります。しかし、文学作品では、同じ言葉を繰り返して使うことを避けます。言葉で表すことを意図的に省いて、読者に想像させるような作文技法も工夫され、それが文学的価値に評価されます。日常の日本語では、主語や目的語を省いても、誤解されない場合もあります。これは、文単位で見ると、文法的には不完全な構文です。英語では、文としての形式を整えるため、省略を補う代名詞を使うことが普通に行われます。公式な文書では、くどいようですが、同じ物や事を、代名詞を含め、別の言葉で言い換えることをしません。一つの文の中で、代名詞を使わない説明をしようとすると、英語では関係代名詞で繋ぎます。「…すること、…するもの」の言い方が多くなるのは、これが一つの理由です。文が変わって、同じ物や事を引き継いで言いたいとき、代名詞で引用しないで、もう一度 元の名前を使います。法律文書は英文も邦文も、文単位が長く、素直に読めないのは、このことが一つの理由です。プログラミング言語では、変数は、必ず一意の変数名を宣言してそれを使います。代名詞の定義はありませんが、名前が長くなるとき、別名(エイリアス:alias)を宣言して使うことをします。契約書などでは、当事者名などに「甲、乙…」などと言い換える表現を見ますが、これがaliasです。

表8.7 定型的な文章末尾の表し方
2010.8 橋梁&都市PROJECT

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