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14. アーチ橋の計算

14.3 アーチ系橋梁の構造力学


14.3.3 一次の不静定構造であること

 図14.3に示す二ヒンジアーチ橋の力学モデルは一次の不静定構造です。解析の考え方は、どこか一か所の部材を仮に切断して、そこに方向が反対の一対の外力(不静定力)を仮定します。この構造系を、静定基本系とします。解析が便利になるような力学モデルを考えます。二ヒンジアーチの場合には、アーチリブの両端を通常の単純支持梁のように固定・可動支承にしておいて、可動支点側でアーチリブに作用させる水平の圧縮力(水平反力)を不静定力とします。荷重が作用すると可動支点が開きますので、可動支点での水平変位を0に戻す条件で水平反力を求めます。アーチは不静定構造ですので、荷重が作用しない状態であっても、何がしかの水平反力分が作用することがあります。例えば、リブと大地との間で温度差があって、リブが伸縮する場合です。したがって、或る標準の応力状態を仮定して、それに合わせるような架設工法が工夫されます。一つの方法は、等分布の死荷重が作用するだけのとき、アーチリブに曲げモーメントが生じない、または最小になるようにします。架設の最終段階でこの状態を実現させる工法が必要です。これは、応力調整と呼ばれます。石造アーチの建設のときには、拱頂部のくさび石(key-stone)をはめこむときに経験的な調整が行われます。水害などを受けて、仮にアーチの基部が開くようなことがあると、石造アーチは簡単に崩壊してしまいます。また、大きな集中荷重を受けて、アーチリブに作用する軸力の位置がアーチリブ断面の重心から大きく外れる状態になると、アーチリブに亀裂が発生して、崩壊に繋がります。近代的なアーチ橋は、アーチリブも曲げ部材としての剛性を持たせて安全を図るようにした構造です。その代わり、架設工事に片持ち梁式に左右の桁を伸ばしてきて、中央での閉合のとき、所定のアーチ形状に収めるようにする作業が重要です。
2010.10 橋梁&都市PROJECT

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