目次ページ  前ページ 次ページ

4. 論理学の応用場面

4.3 日本語文の見直し


4.3.2 日本語では名詞の定義が曖昧

 日本語では、名詞とは、眼に見える具体的な物(もの)を区別する用語です。日本語では人の場合には者を使い、場面によっては名前を付けて区別します。しかし、漢字の「物」は、やや抽象的に広い概念を指します。例えば、人物・動物・植物のように、生き物にも使う熟語がそうです。事(こと)の方の名詞は、抽象的な概念を表します。和語にはこの種の用語が少ないので、漢語の助けを借ります。第1章で解説した用語の定義は、すべて抽象名詞を扱っていて、その説明をしました。普通名詞の説明は一つもありません。英語を含む外国語にあって日本に無い物は用語がありませんので、名詞を作らなければなりません。元の呼び方を利用する、例えばカタカナ用語を決めると同時に、それがどういう物かの説明が必要です。英語では、物と事とをひっくるめた、やや広い概念の名詞の一つにobjectがあります。日本語で理解しようとするときは、物の方だけを考えますが、英語の環境では事も含むことまでの理解が難しいようです。英語の場合、物を表す名詞の分類として、固有名詞・普通名詞・集合名詞・物質名詞の区別をし、動詞の単複の言い方と関係します。日本語の命題で「猫は動物である」を英語で言う時には、猫も動物も集合名詞の概念持たせています。猫は動物の一種ですので、集合論的に言えば、猫は動物に属しています。これを記号式で表すと、「猫⊇動物」です。論理的は、名詞単独は命題ではなくて、「それは猫である」のように仮の主語を立て、述語にbe動詞相当の動詞「である」で繋いで、主語・述語の組みで命題とします。単純に「猫」と言うとは省略の言い方です。日本人にはそれでも理解できますが、文法的に言えば体言止めの表現であって、誤解される危険があります。猫は動物に含まれますので、記号式は「猫⇒動物」で表します。英語のcatは、冠詞の区別と(a、the、使わない)、単複の組み合わせで、意味の限定ができます。定冠詞theが付くと、既に話題として取り上げたと特定しますので、固有名詞扱いです。それ以外は、「猫という物」の定義で使うか、集合名詞と解釈します。論理記号⇒は、「猫ならば動物の一種である」と解釈するのですが、これは定義の意味で使うことになりますので、(if〜then)の条件文ではなく、英語のbe動詞を使う定義文になります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

前ページ 次ページ