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1. 用語の定義と解説 |
1.1 一般的な論理学の用語 |
1.1.4 命題(メイダイ):proposition |
命題とは、我々の判断・断定を述べた文です。判断とは、いくつかの観念の組み合わせからなっています。したがって、命題は、例えば「この花は赤い」のように、客観的な事実(fact)を表したものです。そしてこの判断を受け入れるべきか、拒絶するかという選択の可能性がついてまわります。これを論理学においては、「命題とは真または偽である文である」と言います。アリストテレスの命題の定義は、「真と偽を語ることが出来る文」であるとします。この真または偽という二つの値のどちらかを必ず取るという前提を、二値原理(principle of bivalence)と言います。いつもそうなるのではない場合を扱うことが多値論理学の議論です。「この花は美しい」は、意見(mind)を表しますので論理的な文としません。 文は、主語・述語に大別する構造を持ちます。文の真偽だけに注目して命題の繋がりを扱う論理学を命題論理学と言います。幾つかの命題が接続詞(かつ、または、ならば)で繋いで複合してできた命題を複合命題と言い、そのときの構成要素となった命題を要素命題と言います。ある命題の否定を否定命題です。二つの命題の接続が選言命題(PまたはQ)の場合、PQのことを選言肢と言います。連言命題(PかつQ)では連言肢と言います。二つの命題が「(もし)PならばQ」のように結合された命題を仮言命題または含意命題(条件命題、英語ではIF-THENの構文)と言い、この場合のPを前件、Qを後件と言います。「すべての」で始まる命題を全称命題(universal proposition)、「或る(ある)」で始まる命題を特称命題、「である」で終わる命題を肯定命題、「ではない」で終わる命題が否定命題です。この分類は集合論で考えると明快です。論理学では、この4通りの組み合わせはそれぞれA,E,I,Oの記号で表します。これらは、まとめて定言命題と呼びます。 A; 全称肯定命題、「すべての pは、qである」 E; 全称否定命題、「すべての pは、qではない」 I; 特称肯定命題、「或る pは、qである」 O; 特称否定命題、「或る pは、qではない」 A,E,I,Oの主語pは,普通名詞です。固有名詞は単数扱いをしますので、これを主語とする命題のことを単称命題と言います。単称命題は、全称命題(AとE)の特殊な場合と考えます。ここで、「すべて」と「或る」の言い方は、集合論的であることに注意します。古典的な論理学では、集合論が未発達であったことを理解しておきます。 科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」 |
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