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計算幾何基礎 教材3

幾何モデリングのプログラム

NUCE_BASIC+GEOMAP

コマンド レファレンス

島 田 静 雄: E-mail: QYK02464@nifty.ne.jp
初版1988、第三版 2001-01-15

概説

 NUCE_BASICは、そもそもFORTRAN言語で書かれたプログラムであって、その実行状態においてはインタラクティブなBASIC言語のように動作します。このNUCE_BASICには、別に準備したFORTRANのサブルーチンを追加してコンパイルすれば、これらを追加のコマンドとして使うことができます。GEOMAPは幾何モデリングのサブルーチンライブラリの名称ですが、これを組込んだものをNUCE_BASIC+GEOMAPと呼ぶことにしたのです。NUCE_BASIC言語の仕様は、一応JIS-C6207-1982の基本BASIC (Minimal BASIC)に準拠していますが、1970年度末に発表された8ビットのマイクロコンピュータNEC-PC8001に搭載されていたインタラクティブなBASICのユーザーインタフェースとほぼ同じように動作するように設計しました。その理由は、NEC-PC8001を始めとしたマイクロコンピュータが非常に普及して、多くのユーザーは特に詳しく説明をしなくても、BASIC言語そのものを良く知っていた、という背景があったからです。

 NUCE_BASIC単独は、初心者のプログラミング教育に利用できますが、この言語の目的は、やや高度なプログラムの利用のためのインタラクティブな道具を提供することにあります。1980年代、科学技術計算のプログラムは殆どFORTRANで書かれていました。例えばGEOMAPは幾何モデリングのサブルーチンライブラリですが、これを使うためには、ユーザーは条件を変えるたびに自分でFORTRANのメインプログラムを書いて、コンパイル、リンクして実行させる、という手間の掛かる作業を強いられました。NUCE_BASICは、これらのサブルーチンを利用するためのプレプロセッサとポストプロセッサを兼ねたようなインタラクティブなツールを提供することにあり、そのモデルが8ビットのマイクロコンピュータのBASICでした。つまり、本体がBASIC言語で、そこから特殊なコマンドを利用するような形でサブルーチンライブラリを使うという考えです。

 NUCE_BASIC本体は、最小限のキーワードを持った言語仕様になっていて、単純な科学技術計算はFORTRANよりも使い勝手が良くなっています。追加のサブルーチンをコマンドとして組込むにはプログラマの手助けが必要です。この作業を便利にするためのユーティリティプログラムBEDITORが別に準備されています。これは、サブルーチンやファンクションをどう言うキーワードで使うかを指示するデータを元に、それを組込んだFORTRANのソースコードを自動的に作成してくれるものです。プログラマは、これをコンパイルし、必要なライブラリをリンクして目的に合ったBASICのプログラムを完成させることができます。NUCE_BASIC+GEOMAPはこのようにして作成したものです。したがって、NUCE_BASIC+GEOMAPには、利用するコンピュータシステムに合わせた種々のバージョンがあります。学校内のUNIXシステムでは32ビットバージョンが動きますが、学生が自宅で実習できる16ビットパーソナルコンピュータ用もあります。

 このマニュアルは1988年に幾何モデリング教材の一部として作られたのが最初です。当時のパソコンではグラフィックス関係は機種依存性が高かったので、日本IBM-5550とNEC-PC98でしか利用できませんでした。このマニュアルは、NUCE_BASICのコマンドレファレンスですが、中身はMinimal BASIC, グラフィックス、GEOMAPの三種類のコマンドの解説です。付録として、NUCE_BASICの言語仕様と、BEDITORの使い方の解説を加えてあります。

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