4.3 作図コマンドの標準化

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 手書きでイラストレーションを作る場合には、インクペンや鉛筆などで線図で描くのと、クレヨンや絵の具を使う塗り潰し法の二つの技法があります。この二つの方法に対応する典型的な作図装置がそれぞれペンプロッタとCRTモニタです。作図命令にもこの二種類の装置別もしくは両方可能な装置用のものがあります。工業製図は線図を基本としますが、ある領域を他と区別するため、塗りつぶしに対応させたハッチングなどの技法を応用します。しかし、色を使ったり、濃淡表現を混ぜると複写が正しくできないこともあって使用を制限しているのが普通です。一方、CRTは原理的に塗りつぶしの原理で表現されます。レーザープリンタなどの印刷装置も、小さな点の集合で塗りつぶしの原理でプリントされます。そのため、一般的に線図の表現に難点があって、印刷単位の点の精度が粗いと、細い線の表現ができなかったり、斜めの線がジグザグにしか表現できません。

 GEOMAPでは、原則として線図による作図コマンドを採用していて、それを直接グラフィックモニターに出力させるか、または一旦メタファイルに書き出して別のデバイスに出力させることを考えています。グラフィックスは装置依存性が高いので、GEOMAPではグラフィックス出力をデバイスに依存しないコマンドDPMOVE、DPDRAWなどに渡すようにしています。システムエンジニアは、この命令を解読する装置依存のデバイスドライバを入れ替えて、目的のシステムに合った実行形式のプログラムに構成します。

 コマンドのDPMOVE, DPDRAWは、どのグラフィックス装置にも対応する命令です。PLOT10ではmove/draw、Calcomp社のプロッタではCALL PLOT、Win32ではMoveTo/LinToなどに対応できます。線の種類は装置に依存しますので共通化した仕様を決め難いので、DPENTXのコマンド一つしか決めてありません。標準の線種は実線(1))ですが、破線、点線、線の太さの相違、カラーの選択などは線種(2)以上を適当に使い分けるようにしています。

 GEOMAPの幾何モデルをカラーのCRTモニタで観察し、カラーのハードコピーをインクジェットプリンタなどで得たいとき、作図のソフトウェアが線図用とは違ったものに入れ替えなければなりません。隠れ線の処理よりも、隠れ面の処理の方がアルゴリズムが簡単になります。この演習用のGEOMAPバージョンでは、カラーを利用する塗りつぶしのコマンドを組込んでいません。このようなコンピュータグラフィックスを利用したいときには、幾何モデルそのものをファイル化して、別のアプリケーションで対応することにします。

 この演習用のGEOMAPバージョンでは、テキスト出力の場合とグラフィックス出力の場合とは原理的に別々の扱いになっています。この意味は、製図で普通に行なわれているような、線図の中に文字を書き込むことができないことです。CRTモニタはグラフィックスと文字とを同じ画面に出力していますし、スクリーンのハードコピーを取るときには同時に出力できる装置もあります。しかし、グラフィックス座標で指定した場所に文字を書き出すことはできません。文字を描き出す古典的な方法は、文字をベクトルフォントで用意しておいて、線図として描くことです。ユーザーは、NUCE_BASICのプログラムとして各自で作図用にサブルーチンを作ることができます。平面図形にはDPMOVE, DPDRAWの組みを利用できます。立体的な図形にはDQMOVE, DQDRAWの組みが使えます。例えば、立体図形に座標系を参考のために描きたいとき、4つの空間点(0, 0, 0), (x, 0, 0), (0, y, 0), (0, 0, z) を使うのがよいでしょう。


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