1.3 投影図を作るための座標とカメラの概念

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 幾何モデルを投影図に表わすときには、あらかじめ座標系についての概念を理解しておく必要があります。まず、幾何モデルは、仮想の三次元空間に作ります。これを世界座標系の空間と呼びます。我々の現実空間との相似で考えるときには、座っている机の上に原点があり、机の手前側にx軸、右手の方向ににy軸、高さ方向にz軸を考えるとよいでしょう。原点は、机の上の、ある高さに浮かして考えます。

 プリミティブの幾何モデルは、世界座標の原点を中心とするような位置関係で生成されます。プリミティブの寸法単位は、仮に cm と仮定して、机の上に乗る程度の大きさで生成させるとよいでしょう。このモデルを写真に撮るとして、カメラを手にし、ファインダーを覗き、幾何モデルが視野に納まるようにします。このカメラの位置ぎめを、コマンドDPCAM で定義します。カメラ位置の座標(x, y, z)は、レンズの視角で調整する必要があります。35mmフィルムを使うカメラでは、標準レンズが焦点距離50mmで、その視角は我々人間の眼の視角に近くなっています。どの範囲が写るかは、フィルムの横幅(b=35mm) と焦点距離(f=50mm)との比率に関係します。(b/f) が大きいとワイドレンズ、小さいと望遠レンズになります。DPCAM のパラメータは、 th=b/f で与えます。省略すると th=1 が設定されますが、これはかなりワイドカメラの仕様です。カメラの位置は、世界座標の原点からどれだけ離れてカメラを構えれば幾何モデルが視野に納まるかで決めますが、これは感覚的に理解してください。カメラの定義を簡単にするため、カメラの視野の中心は、いつでも世界座標の原点に合わせてあります。

 カメラとは、理論的な投影の原理を使って、三次元の対象物を二次元の図形に変換する処理を感覚的に理解する仮想の装置です。投影法は、普通のカメラの原理と同じような中心投影法を標準に考えます。この仮想カメラのフィルム寸法は、横幅がthだけを指定し、縦の寸法は指定しません。このフィルムをグラフィックスモニターの、横幅いっぱいに引き伸ばすだけの、縦横のアスペクト比を持っているとします。なお、図学で使う平行投影も考えます。平行投影は、原理的には原寸撮影となるので、対象物の寸法にカメラのフィルム寸法を合わせることになるのですが、そこで、対象物の方の尺度を変えた幾何モデルにしておいて投影図を作る、という考え方を採ります。平面図形を描く場合も同じ考えを採用します。但し、対象物をずっと遠方において、望遠レンズを使って撮影すれば擬似的に平行投影になります。

 カメラを構え、フィルムを現像し、印画紙に焼き付ける、という処理に相当したコマンドは、次のような四段階の処理に相当するコマンドが使われます。
(1)
カメラの準備
DPCAM
(2)
フィルムに撮影
HLIMAG/HMIMAG
(3)
引き伸ばし機の準備
DPWIND
(4)
焼き付け
HDISP

 上の4つの過程の2番目は、3次元の立体モデルを2次元の図形モデルに変換する処理です。フィルムに撮影する処理を省いて、一過性の画像を観察するようにするため、下のようなコマンドが用意されています。例題のプログラムは HFDISP を使っています。
(1)+(3)
カメラと引き伸ばし機の準備
DPCAM
(2)+(4)
撮影と焼き付け
HEDISP/HFDISP/HLDISP


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