0.2 プログラミング言語の考え方

 次のページ

 設計は、試行と修正とを繰り返しながら段々と目的の機能を満たすように作業を進めるものです。この作業方法は、コンピュータのプログラミングをする場合にもあてはまる考え方です。コンピュータを利用する設計では、その設計作業はプログラミングをするのと原理的に殆ど同じょうに進められます。設計作業の各段階を再利用できるように記録しておくことは大切です。そのようにしておけば、設計の検査や修正が容易になります。完成した公式の設計文書は途中の試行と修正とが含まれない整った文書になりますが、この中身は大切な内容がブラックボックス化仕勝ちになるものです。これは技術の伝承という面では、秘密保持とするか公開技術とするかの判断に関わる重要な問題になっています。一般論として、技術を公開する方が、ブラックボックス化よりも良い結果を生むようです。

 理想的なコンピュータプログラミングの手法(パラダイム)に、構造化プログラミングがあります。これはプログラミングの流れを単純に分かり易くすることです。複雑な処理が必要であれば、なるべくそれを単独のモジュールにまとめ、全体としてスッキリ見えるようにサブルーチン化します。また単独にでも実行できるものはコマンドにまとめます。ユーザーに分かり易いプログラミングの方法にコマンド駆動型プログラムという考え方があって、ユーザーはCUIの環境でコマンドラインからコマンドを入力させます。この方法では、ユーザーが特殊なコマンド名やその使い方を覚える必要があると言う理由で、一般的には良い評価が与えられないのですが、試行と修正とが簡単にできる言語としての重要性を認識しておかなければなりません。一方、グラフィックススクリーン上で、マウスを使ってメニューを選択する方法はGUIと呼ばれますが、この方法はコンピュータゲームのような一過性の処理では便利ですが、試行と修正のような再現性を要する作業には向きません。したがって、ユーザーの使い勝手のよい作業環境を提供するには、CUIとGUIの欠点を補うプログラミングの考え方が必要になります。

 

 試行と修正とができる環境はプログラマブルであると言います。1970代に爆発的に普及した8ビットのマイクロコンピュータは、BASICのプログラミング言語をOSとしても使えるように組込んであったことが一般のユーザーに受け入れられました。これを受けてJISX3003基本BASIC(1982)が制定されましたが、これはキーワードとして25語、組込み関数として11種類に過ぎない最小構成でした。NUCE_BASICは、このJISの仕様をふまえ、さらにGEOMAPのサブルーチン群が追加のコマンドとして使えるようにしたものをNUCE_BASIC+GEOMAPと命名しました。多くのユーザーは8ビットのマイクロコンピュータの利用に慣れていましたので、プログラムの利用のための説明を最小で済ませることができました。

 NUCE_BASICそのものはFORTRANで書かれ、GEOMAPのサブルーチンライブラリと共にコンパイルして実行形式に作ります。これが実行されると、一種の疑似OSの環境になって、BASICプログラムテキストの編集、その実行、ファイル処理、グラフィックス描き出し、などが制御されます。これらは、元のコンピュータシステムのOSと密接に関わりますので、システムエンジニアの協力を得ながら、利用できるコンピュータの環境に合わせたシステムに組み立てる必要があります。このテキストの例題は、16ビットのパーソナルコンピュータとMS-DOSの環境で動作させたものです。グラフィックスの機能がハードウエア仕様に依存しますので、NEC98またはIBM5550でしか利用できませんでした。Windows95/98などでも利用できるように開発が進められています。


次のページ