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4. 論理学の応用場面

4.2 論理パズル


4.2.3 問題と解答(変数3個の例)

黒衣の三少女(前項文献のQ23より)
(a:)女の子が3人います。3人の名は、彩乃・瑠奈・有紗です。それぞれ服装は異なり、1人は黒
    いドレス、1人は黒いブラウス、残る一人は黒いTシャツを身につけています(順不同)。
    この3人のうち、2人が下の発言をしました。これらのうち、一方の発言はホント(真)で、
    もう一方の発言はウソ(偽)でした。
(b:)黒いTシャツの少女の発言:「黒いドレスを着ているのが綾乃なら黒いブラウスは瑠奈です。
    そして黒いブラウスを着ているのは瑠奈ではありません。」
(c:)黒いブラウスの少女の発言:「黒いドレスを着ているのが綾乃なら私は瑠奈です。そして黒い
    ドレスを着ているのは綾乃ではありません。」
    さて、どの服の子がだれだったのでしょう?

 解析までの手順を説明します。変数記号の約束と仮説の条件を立てます。
(d:)「黒いドレスの女の子は綾乃である」とした命題変数をPとします。
(e:)「黒いブラウス女の子は瑠奈である」とした命題変数をQとします。
(f:)「黒いTシャツ女の子は有紗である」とした命題変数変数をRとします。
(g:) P,Q,Rの真偽値は未定です。それを二人の少女の発言から求め(推論し)ます。
(h:) 黒いTシャツの少女の発言は、論理式で表すと、「(P⇒Q)∧ 」の演算です。
   真偽の取り得る値の演算を表4.3で@〜Dの手順で示します。
(i:)一方、黒いブラウスの少女の発言は、語順は違いますが、論理式で表すと、
   (P⇒Q)∧ で演算します。これを同じく表4.3の下に並べました。
  なお、この結果が真ならQが真である、と 追加の主張しています。

表4.3 発言の論理式表現とその演算

条件となる発言

手順番号

記号式と演算

真理値表

演算結果説明

黒いTシャツの少女の発言
(P⇒Q)∧
命題変数

1

1

0

0

Pの条件

1

0

1

0

Qの条件

@

(P⇒Q)

1

0

1

1

PならばQである

A

0

1

0

1

Qの否定形

B

(B∧C)

0

0

0

1

)と同値

黒いブラウスの少女の発言
(P⇒Q)∧

C

0

0

1

1

Pの否定形

D

(B∧E)

0

0

1

1

Pの否定と同値


(i:) 黒いTシャツの少女の発言は、手順番号Bに演算結果が得られています。その意味は、
  PでもQでもないときに限って真、つまりP,Qが共に偽(0)のときに限ります。
(j:) 黒いブラウスの少女の発言では、演算結果がDです。Pが偽であれば成り立ち、
  Qには関係しません。そこで、Qも真であるとの主張が追加されていたのです。
(j:) ここから推論の組み立てに入ります。
  黒いブラウスの少女の発言をホントとすると、Pが偽(0)、Qが真(1)です。
   この値を、黒いTシャツの少女の発言に代入すると、結果は偽(ウソ)です。
(k:) Pが偽であることは、黒いドレスの少女は綾乃ではありません。これを、表4.4には
  △記号を入れました。Qは真です。これは瑠奈は黒いブラウスを付けていませんので、
  これも△です。そうすると、黒いドレスを着ている女の子は有紗と推論できます。
  これを、表4.4には○記号で示しました。結局、綾乃が黒いTシャツを着ています。

表4.4 発言を元にした推論の結果

 

綾乃

瑠奈

有紗

P:黒いドレス

Q:黒いブラウス

 

 

Q:R:黒いTシャツ

 

 


(l:) 上記までの説明には論理変数Rを含む演算を一度も使っていません。使う場面が無いためです。
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