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4. 論理学の応用場面

4.1 自然言語処理の課題


4.1.5 話し言葉は音楽的な言い方をしている

 紙に書かれた文書は、眼で見て理解していると思うでしょうが、実は、声に出して、それを耳で聞かなければ理解できません。小児用の書物は仮名だけを使いますが、分かち書きをしないと読むときに不自由します。漢字かな混じり文は、漢字がキーワードの役目をしますので、分かち書きをしなくても正しく読み分けができますが、いつもそうではありません。漢字は、音・訓二様の読みがありますので、複数の漢字並びは、熟語または品詞単位での切れ目に読み間違えが起こります。漢字の使い方に常用漢字の制限を適用して部分的に仮名に書き換えたり、別の漢字を当てたりすると、読みの混乱だけでなく意味の混乱が起こります。普通の文書を黙読している場合でも、それを頭の中では音に直しています。読みが分からないと、理解に必要な時間的な過程が中断します。我々が話し言葉を聞いている時、発話者の微妙な息遣い、強弱アクセント、高低アクセントで言い分けていることを助けにして、正確に理解しています。音楽の音譜は、それを明示的に文書化する方法です。音譜単独は音を切る記号ですが、音を連続させる記号にスラーとタイとを使い分けます。種々の長さの休止記号も使います。聞いて心地よく聞こえる話し方は、単語や文節の切れ目で、適度な間を持たせますので、音楽的です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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