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4. 論理学の応用場面

4.1 自然言語処理の課題


4.1.4 中間言語に英語を考える

 中学・高校・大学と連なる基礎教育では、外国語の代表である英語を理解できることが重要な素養になってきました。その第一段階が英文和訳です。中学・高校では、基礎的な英語教育が行われています。そこで扱う英文は、比較的上品な、文法を正しく使った、実用的な意味を持たせた書き言葉です。文学作品を教材にすると、レトリック的な表現を含むようになります。情景描写などは、まだ客観的な文構造をしています。しかし、作者の感情を表した文、詩的な表現、さらには会話を引用した文は、意味の理解ができなくなることが多くなります。その典型的な例は、シェークスピアの劇場向けの作品です。物理的な単語の並びだけから意味を理解することが難しいので、その全体に解説が必要です。これには、幅広い知識が必要です。正しい言葉遣いの英会話の文が、英語教育の教材になる例は多くありません。このこともあって、日本での英語教育では、英会話、特に音声を媒介として英語を扱うことに混乱があります。英文を理解すること、つまり英文和訳の逆方向が、和文英訳です。このとき、正しい日本語の文を踏まえなければ、相手に理解できる良質の英文になりません。この双方向の翻訳に、コンピュータの助けを借りる自動翻訳が注目されるようになりました。世界には多くの言語の種類がありますので、個別に双方向の翻訳ソフトを計画するのではなく、或る中間言語を介して翻訳をさせれば、翻訳ソフトの数を抑えることができます。その中間言語に英語をます。ただし、そこで使う英語は、アメリカ英語・イギリス英語の区別を超越した、理想化した文構造を採用します。それに対応して、日本語の方も、正しい日本語を扱う必要があります。このとき、翻って、この報文が主題とした論理学に照らして、文章を扱うことの素養が重要になります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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