目次ページ  前ページ  次ページ

2. 論理演算

2.5 変数を三つ以上使う演算


2.5.10 幾つかの演算の公式

(1) 恒真式(トートロジー) 
        (P∨), (P≡P), (P⇒P)
などの形になるものを恒真式と言い、代数計算では(÷)=1 に相当します。この形が成分に現れたら、消去できます。

(2)矛盾式
    (P∧
この形は、矛盾式です。この形が最終的にできる論理式は矛盾式であり、論理式として実用的な意味はありません。

(3) 命題と記号の重複消去
        二重否定律:   ¬(¬P)≡P
     同じ命題の連言:     P∧P≡P
     同じ命題の選言:     P∨P≡P

(4) 分配律
 代数計算の分配律の例は、「()=abac」です。これと似たものが、論理積∧と論理和∨を使う式でも成り立ちます(表2.8、表2.9を参照)。

(5) 双対原理
 双対原理とは、「或る連続連言式、あるいは連続選言式において、
   @:式の中のすべての連言と選言とを交換し、
   A:式のなかのすべての命題の肯定と否定とを交換するならば、
   B:このようにして得られた論理式は、」最初の論理式の否定と対等である」
と言うものです。
連続連言式とは、例えば; P∧Q∧R…
連続選言式とは、例えば; P∨Q∨R…
双対原理は、上の場合、次のようになります;
     ¬(P∧Q∧R)≡
     ¬(P∨Q∨R)≡
二つの命題に関する双対原理が、ド・モルガンの法則です(表 2-6も参照)。
     ¬(P∧Q)≡
     ¬(P∨Q)≡
連続連言の連続選言式は、例えば次のような式です。これを、選言的標準形と言います;
     (P∧Q)∨(R∧S)∨(…∧…)∨…
連続選言の連続連言式は、例えば次のような式です。これを、連言的標準形と言います;
          (P∨Q)∧(R∨S)∧(…∨…)∧…

(6) 内含の式(P⇒Q)を選言的標準形で表す-その1
 一つの公式は「(P⇒Q )≡ (∨Q)」があります。これを証明する一つの方法を示します。左辺の演算組み合わせは、表2.3に示すように(1,0,1,1)の4通りです。これを(1,0,0,0)、(0,0,1,0)、(0,0,0,1)の三つの演算結果の論理和で合成すると考えて、下の式を立てます。
     (P⇒Q)≡(P∧Q)∨(∧Q)∨()
右辺に分配律などを適用して変換していくと;
     (P⇒Q)≡(P∧Q)∨[∧(Q∨)]
     ≡(P∧Q)∨
     ≡(P∨)∧(Q∨
     ≡(Q∨)
   ∴ (P⇒Q)≡( style='letter-spacing:.1pt∨Q)   ……証明終り
この、式の変換の進め方が演繹です。最後に∴(ゆえに)で締めくくったことが証明です。表 2-3 、表2.6、表2.7の、式番号11の結果を確認して下さい。

(7) 内含の式(P⇒Q)を選言的標準形で表す-その2
 もう一つ別の証明の導き方があります。まず、(P⇒Q)の否定を選言的標準形で表します。この場合には、一つしか項がないので      ¬(P⇒Q )≡(P∧)
 このまま否定を取った表し方もあります。すなわち;
     (P⇒Q)≡¬(P∧)
 しかし、双対原理を使えば、標準の表し方が得られます;
    ∴(P⇒Q)≡(∨Q)

(8) その他
表2.10 二命題の多項式で表されるその他の論理法則

記号式   (*1)

文章での表し方

備  考

P⇒ (P∨Q)
(P∧Q) ⇒P
P⇒ [Q⇒(P∧Q)]
P⇒ (Q⇒P)
[(P⇒Q)∧(P⇒)] ⇒
[P∧(P∨Q))≡P
[P∨(P∧Q)]≡P
[(P∧Q)∨(P∧)]≡P
[(P∨Q)∧(P∨)]≡P
[(P⇒Q)∧P] ⇒Q
[(P⇒Q)∧] ⇒
トートロジー
トートロジー
トートロジー
トートロジー
Pならば、QでかつQでない。ゆえにPでない。  
Qが何であっても、Pが残る。Qが吸収される。
Qが何であっても、Pが残る。Qが吸収される。
Qが何であっても、Pが残る。Qが吸収される。
Qが何であっても、Pが残る。Qが吸収される。
PならばQである。Pである。ゆえにQである。
PならばQである。Qでない。ゆえにPでない。
(PQ)について対称
(PQ)について対称
(PQ)について対称
 
背理法
吸収律
吸収律
吸収律
吸収律
肯定式 (modus ponens)
否定式 (modus tollens)
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

前ページ  次ページ