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1. 用語の定義と解説

1.1 一般的な論理学の用語


1.1.5 三値論理学(three-valued Logic)

 三値論理学は、何かの事象を三つの概念に分け、それらを対立させて扱います。この分け方の方法を、筆者は三分法と言うことにしました。日本語の環境ではよく見られます。例えば、上中下、左中右、勝負ごとでは、勝ち・負けに、あいこまたは引き分けを加えます。じゃんけんは典型的な三分法です。何かの意思表示をするとき、賛成・反対に分けるのが二分法ですが、日本では保留の態度も普通です。左翼運動が盛んであったころは日和見(ひよりみ)の用語が見られました。これらは欧米流の判断法から見れば、曖昧な態度であると非難されます。しかし、解決方法に妥協の提案ができる意義がありますのでよい意思表示法だと思います。しかし、意思決定の段階では、結果的に二値論理に帰着します。数学的な条件に応用するとき、数の(正・負)にゼロ(0)の場合を加えた三分法もそうです。三つの概念に分けるとき、二分法に比べて判断が曖昧になりますので、理論にこだわる人は嫌います。例えば、数を扱うとき、理論上の実数だけを考えるときは0を加える必要がありません。しかし、数を実用的に使うときは、実数であっても、或る桁数のところで表示を打ち切りますので、実質は整数化しています。数値計算は、実際には整数で計算をしています。数の並びを大小順で二つに分けるとき、境界の決め方も悩ましいところがあります。これは、閾値(しきいち:threshold)を決めると言う実用的な処理と関係します。数の場合には、切り上げ、切り捨て、四捨五入のどれを選ぶか、が一例です。一般的なプログラミング言語では、論理的な判断をするとき、二分法の(if〜then〜else)を使います。しかし数値計算用プログラミング言語FORTRANの古いバージョンでは、算術条件文と言うのがあって、if(A)で、Aの値の(負・ゼロ・正)で判断をして三つの分岐先が選択できました。しかし、単純な二分岐条件文を応用することで解決できますので、この条件文は廃止されました。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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