目次ページ 前ページ 次ページ |
1. 用語の定義と解説 |
1.1 一般的な論理学の用語 |
1.1.2 二値論理学:two-valued logic |
論理学では、二つの概念を対立させて扱います。この二つを、(ホントとウソ);(真、偽);(正、誤);(true, false);(T,F);(肯定、否定);(はい、いいえ);(yes,no);さらに、数字の組(1,0) で代表して扱うことをします。「白、黒」などは、その中間段階に幾つもの段階の灰色が考えられますので、二つの対立概念(考え方)として扱うことができません。間違えやすいことは、(正、誤)の組と(肯定、否定)の組との区別です。例えば、肯定文が誤りで、否定文が正しいことがあるからです。命題の正誤の判断を記号に置き換えるとき、命題の文型の肯定・否定を>(1,0)で扱い、論理的正誤にも>(1,0) を使うと、混乱を生じます。なお、日本語では、論理的な正誤の判断は「はい、いいえ」で、肯定・否定を(である、でない)で使い分けます。 二つの対立概念に分けるとき、そもそも、その二つの概念が互いに相手の補完になっていなければ論理が成り立ちません。この間違いの最近の深刻な例は、原子力発電所の安全と危険の判断を論議するときに見られます。「安全な状態である・危険な状態である」は、未だ現実に事故や災害が発生していないが、その恐れがあることを判断するときの思惟を言います。安全と言う判断は、危険があることを理解した上での言い換えになっていますから、実は、安全と危険とは同じ概念であって、対立概念ではないのです。第1.3節に列挙した虚偽の分類で言えば、「1.3.12 原因まちがえの虚偽」に入れます。似ている用語の対である安定と不安定とは、物理的に定義できる対立概念です。ただし、安定であっても、判断としては安全とは言えない場合もあります(この論議は「土木工学と安全」にまとめました)。 科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」 |
前ページ 次ページ |