0.4 剪断応力と付着応力

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 均質な弾性材料で出来た矩形断面梁に剪(せん)断力が作用するとき、断面の剪断応力分布は、高さ方向に方物線になり、中立軸の位置で最大です。その大きさは、全断面に平均に分布すると仮定した剪断応力の1.5倍です。これは、矩形断面の全高さの70%に剪断応力が等分布すると考えることができます。単鉄筋矩形梁の場合の設計実用式では、この70%の高さの代わりに、コンクリート圧縮応力の合力の作用位置と、引張り鉄筋との間隔(jd )を使います。T形梁のように腹部が狭い部材では、狭い幅を持った矩形梁として計算します。

 剪断応力は、主に剪断力で生じます。剪断力は、曲げによる軸方向の応力分布を桁長さ方向に変化させますので、その変化分がせん断応力になります。鉄筋の軸力では、この変化分が鉄筋とコンクリートとの接触面で相互に伝え合います。この剪断応力のことを、コンクリート工学では付着応力と言います。つまり、コンクリートの剪断応力と鉄筋との付着応力とは力学的には同じ性質の応力です。ただし、付着応力の場合、異形棒鋼では機械的な応力伝達作用も期待できます。これは鉄筋の接触面が増加したとみなします。鉄筋とコンクリートとの接触面の計算には、丸鋼の場合周長(円周長)を使います。異形棒鋼では、実質的な周長は呼び径を元に計算した長さよりも大きく取ることができます。この周長はカタログ数値として提供されています。大きな直径の鉄筋を使うと、断面積に見合った周長が相対的に小さくなり、付着応力が大きくなりますので、適度な鉄筋径を選ぶ必要があるのです。


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