4章 投影図と隠れ線処理の基礎

HIDDEN.BAS

4.1 投影変換で考える種々の座標系

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 立体図形の透視図をコンピュータグラフィックスで表わす処理には、種々の座標変換が行なわれます。立体モデルは3次元の図形であるのに対して、グラフィックスは2次元の図形ですから、立体図形の透視図を求めるのは、3Dから2Dへの幾何モデルの変換と考えることができます。この変換に関係する座標系の種類を、まず書き出してみます。

三次元の世界座標系  我々の現実の空間をモデル化して、擬似的な3次元の空間を考えます。そこに考える座標系を世界座標系とします。幾何モデルは、この空間に存在します。
立体モデルの座標系  立体モデルには、そのモデルの各部位を表わすのに便利な、モデル自身の座標系があります。モデルの移動や回転などの変換には、この座標系で考えるのが便利です。これを世界座標系に対する局所座標系とも言い、いつも世界座標系との関連をつけておきます。
カメラの座標系  人が世界座標の中にいて、立体モデルを見ている眼をカメラという概念でモデル化します。カメラには、上と同じ局所座標系を考えますが、これを特にカメラ座標系といいます。投影という変換には、世界座標で与えられている座標を、カメラの座標系で見た座標に変換する処理が必要です。カメラには映像が写る投影面がありますが、カメラ座標系とは、投影面の向きを定義する意味があります。
フィルム面の座標系  この座標系は2次元です。カメラで撮られた像は、仮想のカメラのフィルム上の座標で与えられます。フィルム上の映像はカメラのファインダーでモニターしますが、この感覚は、窓(ウインドウ)を通して世界座標を見ている、と考えることができます。フイルム面の座標系は、カメラの座標系の定義と組みにして決めなければなりません。
ウインドウの範囲  もともと、ウインドウと言う概念はグラフィックスの用語です。グラフィックスでの定義では、世界座標系を最初から2次元の座標系で考えています。平面図形は世界座標系に描かれているとします。ウインドウは、この平面的な世界座標系の一部を矩形に切りだすことを意味します。3次元の図形をグラフィックスで表わすときには、上で述べたフイルムを、引き伸ばし機で焼き付けるとして、フィルムのある範囲を指定することがウインドウの指定になります。
デバイス座標系  画像を表示する装置(デバイス)に設定する座標系をデバイス座標系(DC)といいます。CRT モニターが普通ですが、プロッタなども考えます。デバイスによって図の位置を表わす座標の設定方法が変ります。CRT は、例えば 640X400のドット単位の範囲で左上を原点とした整数値の座標を考えます。装置ごとに座標の方式が異なるのは不便ですので、標準デバイス座標系(NDC) が提案されています。

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